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籠の中に、幾人もの女の人が囚われている。
怜華はそんな景色を初めて見た。
艶のある髪にたくさんの棒のようなもの刺して盛り上げたもの。豪華な着物。
「花魁のお通りだ」
誰かの声に怜華は振り返る。
歩いているのは、男の人ばかり。籠の前に立っている人は、物色するような目で中にいる女の人たちを見つめていた。
(気持ち悪い)
その言葉が、一瞬何も分からなくなった怜華の胸に残る。
その時、怜華の背後で男の驚くような声がした。
「あの、白鶴大夫を買った男がいるのか……」
男の視線を追うと、子供を二人ほど前に連れ、傘を刺し掛けられた、大きな女の人が歩いていた。
よく見ると、大きな黒い靴のようなものを履いている。
そして、怜華は息を呑んだ。
「なんせ、あの美貌だからなぁ。おまけに三味線も芸も右に出るものはいないと」
誰かの囁きが聞こえる。
女の人は、とても綺麗だった。そして恐ろしかった。
優しげな目で、周りの男を軽蔑するように見下している。
怜華は混乱したまま、建物の裏に逃げ込んだ。
(なに……? あれは)
何かが上がってくる。とっさに口を押さえ、息を止めた。
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