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「おい! 目を覚ませ……!」
男の子の声がする。
怜華は力が抜けていく中、無理矢理目を開いた。
薄暗い森の中。静まり返っていて、まるで嵐が過ぎ去った後のようだ。
(……なに、してたんだっけ)
何も思い出せない。
「怜華……!」
誰かが怜華を呼んでいる。怜華はそちらに目を向けた。
黒髪、黒目。目が霞む中、綺楼の国民の特徴を持った少年の姿がぼんやりと見える。少し伸びた髪を、高い位置で結んでいる。乱れた髪の中に紫の紐が見えた。
服装はよく見えない。だが、背中に何か長いものを背負っているのはわかった。
(ああ、そうだった……)
痛むお腹を抑え、怜華は思い出す。
全ては、一ヶ月前 ———
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