まつ

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 何も言えない怜華を見て、怜凛は何かを思い出したようにわざとらしく人差し指を立てる。 「そうだ。傭兵種族の奴らの特徴だが……。髪の一部が、紫色だそうだ」  怜華はバッと顔を上げた。 「それって……!」 「あと、もう一つ」  怜華の声を遮り、怜凛は怜華を見据える。 「英雄になろうなんて、思うなよ」  怜凛は持ち上げた刀を自らの首に振り下ろす。怜華の喉のどこかで、悲鳴にならない悲鳴が鳴った。  怜凛の首は落ちなかったが、代わりに身体は崩れ落ちるように座り込んだ。   「お姉ちゃんっ!」 「っ……お姉ちゃんだと?」  怜凛———否、光は眉を顰めた。 「え……?」 「怜華殿。楔ノ巫女が姉とは、いったいどういう事だ」  驚く怜華に、美鶴が詰め寄る。 「楔ノ巫女は、必ず一人娘の者がなるものだ。でないと、厄災が起こると言われてる」 「厄災⁉︎」  怜華はいよいよ驚くしかなかった。  厄災を呼ぶ忌み子。  それが、怜凛の蔑称だったから。 「どういう……」 「厄災は、案外今起きてるのかもしれんのぉ」  商人の女の人が、袖から煙管を取り出し咥える。 「わしの名は、まつ。薬師(くすし)じゃ」  その場にいる、四人の顔を見ながら彼女はニッコリと笑った。
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