出会い

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 小さな女の子。六歳当たりだろうか。  すみれ色の目が怜華を見つめている。  金色のブランドが風になびき、レースのついたネグリジェが彼女の顔を隠す。 「っ……へくしゅ!」  途端、彼女は勢いよく頭を振り下げた。 「寒いよぉ。ばぁや、どこぉ?」  よくよく見ると、彼女は柔らかそうな足を剥き出しにして裸足で立っている。   「どうし……」  怜華は声を掛けようとして、やめた。  誰も、お姉ちゃんを助けてくれなかったから。  お姉ちゃんはそのせいで帰ってこないのだ。  怜華は前を向いて歩き出す。が。 「迷子の子供がいたら、助けるのが基本だ」  知らない少年の声で怜華は立ち止まった。  無言でもう一度歩き出すと、再び低い声が投げかけられる。 「声を掛けられても返事をしないのか?」  怜華は諦めて振り返る。長い刀を背負った少年が、真っ直ぐに怜華を見つめていた。  黒い袴に黒い小桜文様。花は金色だ。  黒い髪を長い紫の紐で纏めているその姿は、異国のものだとすぐに分かった。 「……お前、綺楼の人間か」  何も言えずに突っ立っている怜華を睨む彼の目は黒い。 「綺楼……?」 「そうだろう。黒い髪に黒い目。正真正銘の綺楼の民だ。まさか知らないのか?」  彼は目を丸くした。   「いたぞ! 殺れ!!」 「っ! さっきの怖い人」  突然の怒鳴り声に、女の子が怯えたように怜華の後ろに隠れた。
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