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仁は、優しい陽射し下で、公園のベンチに座り周囲を見渡した。
もうすぐ桜の咲く、晴れた暖かな日曜日の公園にはたくさんの人がいる。
お茶を飲みながらのんびりと話す老夫婦。
赤ちゃんを抱いて、幸せそうに微笑み合う若い夫婦。
小指と小指を絡めて、笑顔で歩く制服姿の男の子と女の子。
ケラケラと笑ながら、走り回る小さな姉弟。
もうすぐ桜が咲きそうな公園には、たくさんの笑顔が生まれている。
そう、生まれている。
そんな暖かい公園で、僕はいつの間にか居眠りをしていたようだ。
気付くと、辺りはうっすらと暗くなり、気温も下がっている。
僕は、ベンチで伸びをして天を見上げた。
紫色に染まる天を見上げると、一番星がうっすら見えた。
誰かに呼ばれたような気がして振り向く。
そこには、一人で佇む女性がいる。
いる、気がした。
僕は小さく微笑むと、ベンチから立ち上り、いる気がした誰かの方に笑顔を向けて言った。
「…」
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