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なかなか踏ん切りがつかないのは、情けなくなるほど臆病な性格のせい。
そんな事はわかりきった話で、勢いつけて木の影から飛び出すだけなのに──できない。
力なく地面に膝をついて、桜の木にうなだれて頭を押しつける。まるで桜に懇願しているようだ。
涙が溢れてきてしまう。
どうか、一生のお願いだから。
僕に、一歩踏み出す勇気をください。
命と引換えでかまわない。
だから……
何も考えてはいけない。
そう。
今までもそうだった。
何もしてこなかったし、何もしたくはなかった。
考える事すらやめたはずだった。
だからこれから先も、何もないに違いないんだ。
死ぬ気で手に入れたいと、唯一望んだ事も無くしてしまった。
一生懸命なんて言葉が、大嫌いだった。
一生涯を懸けて、命を懸けて、頑張るなんて、心にもないことをみんな言う。
でも僕は、今。一生懸命に死にたいんだ。
だったら死ぬしかないだろう。
それが今の正直な気持ちなんだ。
もう、終わりにしたい。
桜にしがみつくようにして立ち上がる。
意を決して、前を向いた。
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