序章 美

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「んで、お前はなんて答えたわけ?」 帰り、守谷を残らせた。 初日の白浜の様子を聞きたかったのだが、あんまよくなさそうだな。 守谷がこんな不満そうな顔をするのは珍しい。 「答えようがなくて、少しずつ勉強していこうって話しました。すみません。完全、想定外の反応でして」 なるほどな。 「まあ、良いんじゃねぇか。初日なのに突っ込んでも、関係悪化するだけだろ」 とはいえ、白浜の基準は探らねぇとな。どこを基準としているのかイマイチわからねぇ。 多分、自己基準。 美大卒業だろ? 技術的なことを言ったのであれば、自分より技術が優れているやつが上手くて、優れねぇ奴が下手くそってところか? 技術的なものだけじゃねぇ。 それがわからないなら、販売に入ったときに苦戦すんだろうな。 「まだ営業に入れる気はねぇし、気長でいい」 「でも、白浜さんは山崎さんに憧れてるって」 「んなもん、目立っている奴を見りゃそうなんだろ。アレに憧れてるってだけで、具体的にどうなりたいは言ってきてねぇから、多分、その程度」 そういうと、守谷は少し納得した様子だった。 「新卒だからな。どうなりたいかなんてわかんねぇやつが大半だろ。これからだ。これから形になるかどうかだ」 「僕もあまり考えてなかったなぁ」 「お前は今も考えてねぇだろ。呑気に副支店長やりやがって」 「ヒドイ」 「支店長やりゃ楽しいぞ」 「無理です。そんな、責任あるような仕事、僕は向いていないので」 苦笑する守谷に呆れる。こいつは本当に……。 根性どうにかしたい。
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