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「今日はどんな絵画があるか、一通り説明するね」
「はい」
下手くそな絵画を一枚一枚見ていく。
売るためとか、アポ取りのためにとか、わかってはいるけど疲れる。
なぜ、こんな絵画が売れるのかよくわからない。
守谷さんは、それはそれは丁寧に説明してくれる。楽しそうに、魅力が伝わるように、でも全く響かない。
「今度、この絵画を売ろうと思ってる。4月14日にアポ取ってあるから、白浜さんもその日、空けておいてよ。時間は後で伝えるね」
「はい」
守谷さんの指した絵を見上げる。
部屋のカーテンを開けて、窓の向こうを見ている女性の絵画。
女性は美人だけど、光の加減とか、もっとこう……描き方があると思うんだよね。
カーテンの色だって、菖蒲色より若芽色の方が映える。光の差し具合によっては、綺麗な色になるはずだ。このくらいの画家ならゴロゴロいる。
私でも描ける。
「よし、次ね」
守谷さんの説明はお昼まで続いた。
オフィスに戻ると、今日は全員いた。昨日は査定に入っていたらしく、残り二人がいなかったのだ。
樋口さんと、間宮さん。
樋口さんは割とベテラン。たしか、倉内さんよりも長かった。
間宮さんは3年目。一番年が近い。
「お、戻ったな。それじゃ、ミーティングすんぞ」
それを聞いて、守谷さんが慌てて座る。私も真似して慌てて席に着いた。
「女の子かぁ」
「樋口さん。その発言ダメっす」
「す、すまん」
私を見ていう樋口さんに、すかさず倉内さんが刺す。
ああ、胸の高鳴りは抑えられないなぁ。
自分より年上の人にズバッと言えるなんて格好いい。
こんなことできる人、なかなかいない。
なんで結婚してるんだろ?
私の方が早く出会っていればなー。
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