序章 美

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「解決って?」 「根本的には解決にならないが、実は──」 「ボス。言うなよ。つか、あんたが一番言っちゃダメだろうが」 「真面目だな」 長坂さん、遠回しに倉内さんをからかってない? この2人の掛け合いが面白い。 「あ、だが、一つ話せることがある。今日から解禁になったから、言っておく」 資料を持って、こちらに来る倉内さんはもう内容を知っているようだ。 「『黄金の勝利』がArtsUtopiaに戻ってくる」 衝撃のあまりみんな言葉を失った。 「何驚いてんだよ。孤児院に寄贈した神谷(かみや)様が去年12月に亡くなったんだ。ありえなくねぇだろ。孤児院からすると200億なんか持っておけねぇしな」 「倉さん、知ってたの?」 「知ってるも何も引き渡したいって、山崎のところに連絡が入ったからな」 みんな納得した。 「6年も経ってるのに山崎さんに?」 「ん? ああ、あいつよく孤児院手伝いに行ったり、神谷様のところに遊びに行ったりしてたから……。神谷様と仲良かったの知ってたんだよ、孤児院のスタッフは。それに亡くなる前に、『黄金の勝利を頼む』って、山崎が言われてたからな」 ……そんなにすごいんだ。山崎さんって。 奥さんの話をしているのに、絶対に彼は『山崎』と呼ぶ。 わかりやすいってだけなんだろうけど、それでも、本当に結婚しているのか疑ってしまう。 もしかすると……、そこまで仲良くないんじゃないか。 そんな考えが浮かぶ。 失礼なことを思ってしまった。 「今考えているのは、全員平等な状態で黄金の勝利のディーラーに挑めるようにすることだ。そのために新卒から3年目は黄金の勝利のディーラー研修もするから、白浜さんも考えておいて。関東エリアは俺が中心だから、気軽に参加してもらえると嬉しい」 へぇ……。 そうなんだ。 そういえば、山崎さんも若いときになってたもんね。 もしかしたら、こうやって研修があったのかもしれない。 私は山崎さんに憧れていると言った。 黄金の勝利を見てみたいのもある。 「やります!」 「おお」 長坂さんは私を見つめると、にこりと笑った。
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