序章 美

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池袋の東口。忙しなく人が行き交う駅や、道。 サンシャイン通りは平日なのに普通に歩いても人にぶつかる。学生ばかりがいて、スーツの私は浮いていた。 1ヶ月前まで、私も学生だったのに変な感じ。 横に抜ける道を見つけて、左に曲がり、喫茶店があるのを確認して突っ切ると少し高めのビルが現れた。10階建ての3階だったはず。 エレベーターに乗ると、急に緊張が襲ってきた。 私は今日から社会人だ。 待っていてくれたのは、守谷(もりや)さん。電話でも応対してくれた人だ。軽く挨拶を交わすと、 「倉さん、来ましたよ」 と、私を中へ案内する。 倉さん? 支店長さんかな? スーツ姿がお似合いなのに少し気だるそうな人が立ち上がった。 呑気に背伸びをして、私を見る。 「来たか。新人」 「よ、よろしくお願いします……」 少し怖さを感じながら、頭を下げる。 「そんな緊張すんなよ」 少し怖そうな感じだったのがガラリと変わる。柔らかく笑った彼の笑顔に、胸がトクントクンと鳴りはじめた。 「池袋支店の支店長、倉内(くらうち)だ。ま、よろしく」 池袋の支店長さんに、私は一目で恋におちた。
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