十五章 富士山

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「わかりやす過ぎるだろ、お前」 呆れた顔で、倉内さんが私を見つめた。そんな彼は、これから出るらしく、背広を着て、襟を正している。 「え、そうですか?」 「仕事に支障来すんじゃねぇぞ」 彼の斜め前の愛海さんが苦笑している。 「大丈夫です。今、無敵な気がするんで」 「おー、一番危ねぇ状態だな」 そんな風に言って、倉内さんは愛海さんに業務を渡す。 「ま、お前のが危ないか」 「なんですか?」 「顔色わりぃって言ってんの。マジでいい加減休憩取れよ?」 「最近、そればっかりですね」 愛海さんは相変わらず休憩を取らない。 完全にオーバーワークな気がする。倉内さんも、何度も言ってるのに、なんでそんなに休まないんだろう? 「じゃ、あと宜しく」 そう言って、彼は出ていった。 そろそろ9月。そういえば、イベントやるって言ってたな。 何やるんだろう? 首をかしげながら、震えたスマホを開くと室町さんからメッセージが来ていた。 『9月23日に画廊を使わせていただきたいです。 終日空くので都合の宜しい時間を教えて下さい。』 9月23日って……。やっぱり。 イベントの日に、被ってる。 「愛海さん」 「ん?」 カタカタとパソコンを鳴らす愛海さんは、ちょうどイベントの企画書を作成しているところだった。 「あの、室町さんからこないだの件で話が来まして。23日に借りたいってことなんですけど」 「ちょうどイベントの日に被ってるね。いいんじゃない?」 「あの……、もし空いていたら、愛海さんも同席して欲しいって室町さんが……」 愛海さんは少し意外そうな顔を私に向けた。 「それは嬉しいね」 そう呟くと口角を上げる。 「わかった。多分、午前なら人も少ないと思うから行けるよ」 「はい!」 こうして、私は室町さんに返事をし、23日の10時から、art-girlsの元メンバーと室町さんが向き合う会を開くことになった。
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