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「わかりやす過ぎるだろ、お前」
呆れた顔で、倉内さんが私を見つめた。そんな彼は、これから出るらしく、背広を着て、襟を正している。
「え、そうですか?」
「仕事に支障来すんじゃねぇぞ」
彼の斜め前の愛海さんが苦笑している。
「大丈夫です。今、無敵な気がするんで」
「おー、一番危ねぇ状態だな」
そんな風に言って、倉内さんは愛海さんに業務を渡す。
「ま、お前のが危ないか」
「なんですか?」
「顔色わりぃって言ってんの。マジでいい加減休憩取れよ?」
「最近、そればっかりですね」
愛海さんは相変わらず休憩を取らない。
完全にオーバーワークな気がする。倉内さんも、何度も言ってるのに、なんでそんなに休まないんだろう?
「じゃ、あと宜しく」
そう言って、彼は出ていった。
そろそろ9月。そういえば、イベントやるって言ってたな。
何やるんだろう?
首をかしげながら、震えたスマホを開くと室町さんからメッセージが来ていた。
『9月23日に画廊を使わせていただきたいです。
終日空くので都合の宜しい時間を教えて下さい。』
9月23日って……。やっぱり。
イベントの日に、被ってる。
「愛海さん」
「ん?」
カタカタとパソコンを鳴らす愛海さんは、ちょうどイベントの企画書を作成しているところだった。
「あの、室町さんからこないだの件で話が来まして。23日に借りたいってことなんですけど」
「ちょうどイベントの日に被ってるね。いいんじゃない?」
「あの……、もし空いていたら、愛海さんも同席して欲しいって室町さんが……」
愛海さんは少し意外そうな顔を私に向けた。
「それは嬉しいね」
そう呟くと口角を上げる。
「わかった。多分、午前なら人も少ないと思うから行けるよ」
「はい!」
こうして、私は室町さんに返事をし、23日の10時から、art-girlsの元メンバーと室町さんが向き合う会を開くことになった。
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