十五章 富士山

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「すごい……! 私、今日、1日ここにいたいです」 室町さんに言うと彼女は苦笑した。 愛海さんは、声を上げて笑うと、最後の1枚を飾る。 「理絵ちゃんの成長過程がわかるの良いね。どれだけ真剣に取り組んでたのかわかるよ。伝わると良いね」 にこりと笑う愛海さんに、室町さんは少し顔を赤らめて頷いた。 なんだかんだで、画家の室町理絵を一番応援していたのは愛海さんなんだろうな。とても嬉しそうだ。 「もう一枚、貼っていい?」 愛海さんが室町さんに聞く。彼女は首を傾げた。 愛海さんはニヤリと笑うと、額に入れた絵を出してきた。4枚のカードを1枚にしている絵。私にはよくわからなかったけど、室町さんは目を見開いた。 「懐かしいでしょ?」 笑う愛海さんの手から、額を受けとると室町さんはそれを抱き締めた。 「あの、それは……」 「昔、イベントのときに、ポストカードを作ったんだよ。4人が1枚ずつ描いて、組み立てると真ん中に太陽が浮き出るようになってるの。この太陽と、右下の絵が理絵ちゃんの」 よく見ると、タッチの仕方が、室町さんのものだ。 左上にある太陽の下に、富士山がありありと聳えていた。繊細な線から、富士山に柔らかさを持たせている。上手いとは言えないけど、でも、理絵さんの繊細なところや、惹き付けられるところは変わらない。 絵も素敵なのだが、この4枚が組合わさっているのがすごくグッとくる。私はあまり知らなかったけど、この4人がどれだけ仲がいいのか伝わってくるし、真ん中の太陽が一体感を感じさせた。 「それじゃ、そろそろ3人来ると思うから、私は迎えにいって来るね。2人はゆっくりしてて」 にこりと笑うと愛海さんは画廊を出て行った。 静かだ。 室町さんを見ると、さっきのポストカードを見つめていた。 「緊張してます?」 当たり前のことしか聞けない。室町さんを見ると、眉を下げながら頷いた。 「そうですよね。私も、室町さんのことなのに緊張しています」 そう言うと、彼女はぱちくりと私をみた。 「でも、愛海さんが持ってきたポストカードを見て、皆さんが本当に仲良かったんだって感じます。だから、きっと大丈夫ですよ」 口角を上げると、室町さんは少し不思議そうに私を見つめたあと、カードに視線を移し、懐かしそうに頷いた。
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