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「10件が楽勝とは頼もしいな」
目の前に座る倉内さんが言った。
この人にそんなこと言われると俄然やる気が出る。
まだ会って初日なのに。
「10件掛けるのに、電話をさらっとしてやるのは勿体ないでしょ。名簿の備考欄に、過去に何を購入したのか、どんなイベントに出たのかを確認してから電話するといいよ。思考しながら、電話した方がいい」
「はい」
返事をしたものの、思考しながらってどうやるんだろう?
全くわからない。
やり方を教えてもらったし、ロールプレイも実際にやったので、すぐに電話を掛けてみる。
「今はいいです」
「あ、そうですか。それではまたの機会に……」
絵画なんて、そんな簡単に買おうと思う人なんていないよな。
またの機会に……。いつだよ、それ。
教えてもらった通りにやっているけど、なんだかモヤモヤする。
10件が大変な理由がよくわかった。
掛けるのは簡単。でも、断られ続けると精神的にきつい。
「楽勝アピールしたわりに、4件でイライラしちゃってんの?」
先にそう言ってくれれば良かったのに。
意地悪そうに私に笑ってくる倉内さんが憎い。
「どうやれば、繋がるんですか?」
「繋がる方法を探れ。考えながらやるのも大事。さっき守谷がヒントくれてんだろ」
彼はそう言って、昼飯と弁当箱を持って出ていく。
「あと、6件掛け終わったら、画廊行くから頑張ってよ」
私の隣で守谷さんが言った。
「わ、わかりました……」
でも、一件は繋げたいなー。
私は名簿を見つめる。
備考をさっき見ろと言われた。
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