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次は画廊だ。
一つ下の階に降りる。昔は一つ下の階は支店じゃなかったらしい。オフィスに並んであった画廊は倉庫になり、色んな絵画を色んな絵画をお客様に提供できるようになったと話された。
「画廊はこんな感じ。今は支店のオススメを飾ってるけど、アポが取れたら、お客様が求めているもの飾ってご案内するんだ。ホームページに絵画も乗っているから、お問い合わせもあったするから」
「そうなんですね」
そう言いながら、飾ってある絵画を見つめる。
「……これ売り物ですよね」
「そうだね」
「こんな下手くそな絵画を売るんですか?」
私と守谷さんしかいないのに、空気がピンと凍りついた。守谷さんは驚いたように私を見つめる。
「え、下手くそですよね? デッサンはズレてるし、色の混ぜ方も雑ですし、こんなものが売れるんですか?」
「売れるもなにも、売るのが仕事だけど。そもそも上手い下手ってある程度は関係してるかもしれないけど、本当にそれだけ?」
守谷さんは私に質問をする。
上手いに越したことはない。私の周りは2ヶ月前まで美大生だったのだ。申し訳ないが、美大生はこんなレベルではない。
もっとすごい人がいた。
それこそ高価格で売れそうな絵画だって多数存在したのだ。
それをお遊びで描いたような絵画を売る?
ふざけるのも大概にしてほしい。
「これは遊びで描いてますよね?」
守谷さんに聞く。守谷さんは私を一瞥すると口をゆっくり開いた。
「お遊びだって、誰に聞いたの?」
ドクッと心臓が脈打った。守谷さんが醸し出していた優しい雰囲気は今はない。
「え……」
「画家さんに聞いたの?」
「いや……」
引きつりながらも、返事をする。
私が間違っているのだろうか。だって、こんな技術力がないのに、売るなんて烏滸がましい。本当にオススメなの?
そんなものしか、ここには置いてないの?
「……まあ、少しずつ勉強していこう」
守谷さんはとくに深く突っ込むこともなく、話を進めた。
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