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なぜ制服を着ているのだろう、と、不思議に思ったが、
そんな事はすぐに忘れて玄関へ向かった。
そうだ。 これから彼に会いに行くのだ。
図書館で一緒に勉強をする約束だったではないか。
夢の中の私はすっかり恋する乙女の様だった。
自転車を漕ぐ足は軽く、頬に受けるそよ風が心地良かった。
・・・実際の私には彼氏などいなかったのに。
まったく夢とは勝手なものだ。と、こころの中でつぶやきつつ
私は図書館のドアを開けた。
窓際の席に座り静かに読書をする彼のそばで
薄いカーテンがゆっくりと歌うように揺れていた。
私達は言葉を交わさず、軽く微笑み合った。
彼の隣に座って参考書を開く。
長い間そうしていた様な、あるいはほんの少しの間だった様な…。
ただ、お互いの存在を確かめる為に
時々視線を合わせるのが精一杯だった。
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