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目が覚めると、何か暖かなものが私を包んでいた。
外から入ってくる光は青く、まだ早い時間だとわかる。
「……小田原」
呼びかけても反応はなく、私を抱き枕にしたまま眠っているようだ。
「……」
ならばこちらも、と言わんばかりに擦り寄った。起きていないなら今がチャンスだ。
温もりに触れて、幸せな気持ちになる。
「好き」
普段言えない言葉も、言うなら今しかない。
届かなくても構わない。この気持ちを口にできるだけでいいんだ。
聞こえていないのに、急に恥ずかしくなる。さらに身を寄せて顔をうずめた。
「京王」
「⋯⋯ん」
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
小田原は私の体を抱きかかえるようにして上体だけ起こしていた。自分の手元を見ると、小田原の服を掴んでいる。
慌てて離す。
「すまない」
「いいわよ、私も今起きたし」
伸びをしながらベッドを降りる。自分ものそのそとその後ろについた。
いつもよりも体が重くない。
「何か良い夢見たわ」
「夢?」
「そう」
小田原は、急に私を抱きしめた。予期せぬ出来事に困惑するが、身動きは何一つ取れない。
「何だ」
「んー何かさ、こんな感じだったの」
「はあ?」
「あったかくて柔らかくて……落ち着く……そんな夢」
どんな夢だ、全く訳がわからない。
「うん……やっぱり好きだわ。愛してる」
「はぁっ!?」
不意に囁かれ、頬が熱くなるのを感じる。ぎゅっと目を閉じ、しがみついた。
どうしてそんなに恥ずかしげもなく言えるのか不思議でならない。こっちは言おうとしただけで顔もあげていられなくなるというのに。
「……ふふ、顔洗ってきましょ」
離れた時に見た顔は、満足気だった。
こいつだけ満足するなんて不服極まりない話だが、だからといってそう簡単に言えるものでもない。
言えるまで帰りたくない。せめて、今日の夜までには……。
たった二文字の言葉のために、こんなに苦しめられるだなんて。
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