雪かき姫

2/12
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
          ※※※  あたりさわりがない、もっと言うとそつのない生活を八カ月ほど続け、やがて冬休みに入り、クリスマスイブには、あっという間に雪が降り積もった。積雪二十センチといったところ。恐るべし北国の冬。容赦なくどんどん降り、ずんずん積もってくれる。  北国に住むにあたって、雪かきなる作業が必要なことくらいは知っていた。だけど、俺は頑としてやらないつもりでいた。  おとんとも約束したのだ。「転校はしゃーない。せやけど俺は雪かきなんて、せーへんからな」って。  おとんは鷹揚な様子で「わっはっは」と笑い、「ええぞええぞ、雪かきくらい、おとんがやったるさかいなあ」と勇猛に語った。その言葉を信じていたのだけれど、おとんは仕事の疲れを理由に、家に帰ってくるなりビールを飲む。酔っぱらったのを理由に雪かきなんてしない。  だから、おかんが頑張るしかない。というか、はなから、おかんがするつもりだったようだ。「お父さんは仕事で忙しいんやから、やれるところで手伝ってあげへんと」などと気丈なことを言い、非力ながらも雪をかき出す作業に追われるのだ。  手伝ったほうがいいかなとも思うのだけれど、それはダルい。めんどくさい。一度参加してしまったら、この先ずっと、駆り出されてしまいそうな予感もある。  せやから、ごめん、おかん。  俺、やっぱ雪かきせーへんわ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!