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発表会を観に行った後ぐらいから、僕は千咲の動画撮影係になった。
あとから見直すために、携帯電話で撮影してほしいと千咲に頼まれたのだ。
「どうせ、放課後は暇なんでしょ? だったらさちょっと協力してほしいんだ」
確かに僕は身体が弱かったから外で遊び歩くことは少なかったし、習い事も特にしていかなったので暇だった。
「いつかメジャーデビューしたら報酬払うから」
それが千咲の口癖だった。「期待してないよ」と僕が返すのも定番だった。
毎日のように撮影していると、だんだんと僕の頭の中に音楽が染み込んでくるし、千咲のダンスもわかるようになってきた。
ボックスやパドブレだのステップの種類もわかるようになったし、いろいろ指摘もできるようになった。
「いまの『止め方』がしっかりできてないから、キレがなく見えた。さっきの方がよかったんじゃないかな」
と僕が言うと、千咲は微笑みながら、
「スタジオの講師より私の悪いトコ見えてるね」
と言った。いつのまにか僕は誰よりも千咲のダンスが細部までわかるようになっていた。
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