第16話 普段の大人びた雰囲気と違って年相応に見えた

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 行くよ。と言って歩き出した御堂の後を、シャツの裾を握りしめながら付いていく。  川沿いの会場に着いた頃にはもう花火は上がり始めていて、大きな音を立てながら大輪の花が夜空に咲いた。弾けた火花がパラパラと散り、風に乗って火薬の匂いが土手にまで届く。  来る途中に屋台で買ってもらった唐揚げの最後の一つを頬張りながら、紗良も花火を見上げる。その様子を隣で見ていた御堂が吹き出した。 「唐揚げだけで足りた? けどさぁ、恥ずかしがって手を繋げない子が屋台で選ぶメニューじゃないよね。そこはもっと、こう……可愛いの選ぶんじゃないの、普通。リンゴ飴とかさ」 「いやぁ、ホントだよね。唐揚げ買ってもらった後にわたあめ見た時は、女子的にはそっちにしとくべきだったかなって思ったよ。でも、色気より食い気じゃん。唐揚げには勝てないって」 「それを俺にぶっちゃけるんだな。やっぱ真宮はそっちの方がいいや。さっきみたいな事言われると、調子狂う」  あははと御堂が笑ったので、紗良は驚いて隣を見上げた。  いつも口の端を少し上げるだけなのに、大口を開ける御堂の笑顔は、普段の大人びた雰囲気と違って年相応に見えた。
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