第17話 頼りない電灯が、まるで舞台装置の一部の様で

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第17話 頼りない電灯が、まるで舞台装置の一部の様で

「今日は御堂くんの照れ顔と笑顔が拝めたから、来た甲斐があったよ」 「何を見に来たんだよ、花火を見ろよ。それに俺、照れ顔なんてしてないし」  口調はキツかったが、花火を見つめる御堂の笑顔は優しい。赤や緑の光が白い肌を照らして、綺麗だなぁと思いながら紗良は花火よりもその横顔にしばらく見惚れていた。 『禅は他人に全く興味がないんですもの』  幸福な時間のはずなのに、急に御堂の家の前で出会った少女の言葉を思い出してしまい、胸が苦しくなる。全く他人に興味がないのなら、一体なぜ御堂は今こうして隣で花火を見上げているのだろう。そもそも、彼女は何者なんだろうか。御堂の事を「(ぜん)」と呼んでいた。妹なのか、姉なのか。従姉妹かもしれないし、東雲の方の親族かもしれない。 「こうやって花火を見に来るのは久しぶりだなぁ。この辺りも随分と変わったし……昔は、もっと花火が大きく見えた気がする」  しみじみと懐かしそうに目を細めた御堂の横顔を、紗良は相変わらず見つめ続けた。  だから気付いてしまった。その表情がどんどんと「寂しそう」に変わっていったことに。唇をぎゅっと結んだ御堂が、紗良の方に視線を移した。少しだけ何かを躊躇っているようにも見える。
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