第17話 頼りない電灯が、まるで舞台装置の一部の様で

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「綺麗だね。写真映えしそう。撮ってあげるよ」  御堂は綺麗だと言ったが、紗良には少し気味悪く見えた。「写真はいいよ」と言いかけたが、御堂が置いてあった鬼灯を模した提灯を拾い上げ、それを紗良に手渡したので断り難くなる。円の中央へ行く様に促がされ、言われるままに紗良は仕方なく進んだ。ここまで慣れない下駄で歩いてきたせいか、ひどく疲れていて足が痛む。いくつも並ぶ蝋燭の炎がそれぞれ違う動きでゆらゆらと揺れ、まるで船上にいるように平均感覚を失って思わずふらついた。 「真宮」  御堂に名前を呼ばれたが、その声は耳元でしたようにも、遠くから聞こえたようにも感じた。急に怖くなって探る様に手を伸ばす。すぐ側にいるはずの御堂の姿が見えない。 「御堂くん、どこ?」  返事の代わりに、突然強い風が神社の境内を吹き抜けた。  賽銭箱の真上から釣り下がる真鍮製の鈴が、ガランガランと大きな音を立てて揺れる。その風のせいで蝋燭の火も提灯の灯りも吹き消されてしまい、急に目の前が真っ暗になった。紗良は一瞬意識が遠のき、耐えきれず崩れるように膝をつく。  手放して地面に落ちた提灯が、ぐしゃりと音を立てて潰れた。
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