64人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
成が頷く。それを見ると彩響は自分の顔が熱くなるのを感じた。恥ずかしさでどこかへ逃げたい気分になる。そしてふと、まだ確認していなかった事を思い出した。
「もしかして…Mr.Pinkはあなたが外で聞いていると知ってて、私にいろいろ言わせたの?」
「だと思うよ。」
「なっ…!!二人で私を騙したの?!」
「いや、そんなことはない。俺がそこにいたのは本当に偶然だよ。彩響に会いに行かなきゃいけないと思って、オフィスに戻ったら、Mr.Pinkに隣の部屋で待つように言われて…。」
「やっぱり騙してる!ぜったい狙ってやってる!」
「まあ、そんな怒るなよ。…俺、あの時お前が何を言ったのかはっきり聞いてない。だから、もう一回言ってくれないか?」
成がやんちゃな笑顔で聞く。恥ずかしい気持ちと幸せな気持ちが混ざって、彩響はどうすればいいのか分からなくなってしまった。恐る恐る彩響が口を開ける。
「…あなたが、どんな風に私に掃除をさせたのか、それがどうやって私の夢につながったのか、説明したよ。私の人生に何が大事なのか、なにを見るべきか、あなたのお蔭で分かるようになった、って。」
「そう、そして、俺に「ありがとう」と伝えたかった、と言っただろ?」
成の言葉に彩響が笑ってしまう。
「結局全部聞いていたのね?」
「いや、本当に全部ではないよ。一部だけ。そして、Mr.Pinkには言えて、俺には言えないなんて、なんか悔しくなったからわざと言わせたかったんだ。」
そう言って、成が自分の唇を彩響の唇に当てる。とてもかわいくて、温かい感触だった。彩響は微笑んで、成の背中を軽く叩いてあげた。
「もうそろそろ行かなきゃ、遅刻するよ。」
「もうちょっとだけ。」
「大事なミーティングなのよ?」
「その前に、一つだけ。」
「何?」
「本当に俺のこと、好き?俺の「夢」として、この先ずっと一緒にいてくれる?」
成の質問に、今度は彩響からキスをする。深刻だった成の顔がそれで少し和らいだのが見える。彩響は笑顔で答えた。
「あなたが好きよ、この世の誰よりも。だから、あなたの傍にいさせてください。」
その言葉を聞いて、やっと成が彩響を離してくれた。もちろん、再びキスするのも忘れずに。彩響は玄関を出て、成に手を振った。
「では、本当に行ってきます!」
「行ってらっしゃい、彩響。待ってるぜ!」
-オスの家政夫、拾いました。掃除編 完ー
最初のコメントを投稿しよう!