掃除編-6章:近づく距離、揺れる思い

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だから、自分も頑張りたい。ここまで応援してくれた彼に、どんな形でもいいから…恩返しがしたい。 「今日は気晴らしに連れてきてくれてありがとう。スッキリした気分だよ。」 バイクを置いた場所まで並んで歩く途中、彩響が感謝の気持ちを伝えた。すると、成が「違う」と答えた。 「感謝する必要ないよ。俺が頭冷やしたかっただけだから。」 「…頭冷やしたいことでもあったの?なんか悩み?」 成がその場に立ち止まる。そしてじっと彩響の顔を見つめる。その視線がなんだか熱くて、彩響はつい視線を逸らす。 「な、なに?」 「…悩み…あるよ。俺だって、悩みくらい。」 「へえ、そうなんだ。どんなやつ?」 「今は教えない。」 「え?」 「困らせたくないから。今は大丈夫。」 なんだよ、自分から言い出しておいて…。文句を言う彩響のことは軽く無視して、成が手を差し出した。気持ちいい風が二人の間を通って行く。成はいつもの優しい笑顔を見せた。 「帰ろう、彩響。」 「…うん、帰るか。」 まあ、いつか話ししてくれる日がやってくるのだろう。 そう思いながら、彩響はバイクに体を乗せた。
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