掃除編-6章:近づく距離、揺れる思い

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Mr. Pinkの声に、今までマシンガントークを披露していたお母さんの話が一瞬止まる。妙に空気が変わったのを感じた彩響が恐る恐る質問した。 「あの、どんな話ですか?」 「峯野さんは、成は昔サッカーをやっていたのは知ってるのかしら?」 「あ、はい。」 「事故でやめたことも?」 「そう…ですね。」 「そう、なら話が早いわ。実は成、サッカーチームでコーチ職のオファーを貰ったんです。」 「…コーチ?」 ふと海に行ったときのことを思い出す。あの日、成はもう完全にサッカーに対する未練を捨てたように見えた。なのに、実はコーチになりたいと思っていた、とか? 「そうです、成は昔からコーチになりたいと言ってたんです。引退しても、サッカーと関わりのある仕事がやりたいとずっと言ってて。もう選手として活躍するのは無理だけど、コーチなら大丈夫だと思いますので。」 さっきから予想もできないことの連続で、頭が追いついていけない。しかし「コーチ」という言葉だけは耳にずっと響いた。しばらくぼーっとして、彩響は状況を整理した。だから、今成のお母さんがいきなり現れて、自分の息子がサッカーのコーチ職を提案されたという。Mr. Pinkもこの状況を理解しているらしい。…で、なぜわざわざ、自分を呼び出して、こんな話をしているのか?真っ先に本人に聞くべきではないのか? 「あの、すみません。急すぎて状況が把握できていませんが…。なぜこのような話を私にするんですか?本人とお話をするべきなのでは…?」
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