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「成、あなたを責めているわけではないよ。ただ、私の夢はあれだけ応援してくれたのに、どうして自分の夢は追おうとしないのか、分からないだけだよ。」
「…俺の夢?」
「そう、諦めないでほしい。私も、あなたのおかげで諦めなかったから。」
「あんたは…。」
成がぱっと顔をあげる。彩響の目を見ながら、彼が聞いた。戸惑いながらも、とてもはっきりした声で。
「…あんたは、本気で俺が自分の夢を追ってほしいと思ってるの?俺はもうこの家に必要ないって言ってるの?」
必要ないわけ、ない。彼がこの家にいてくれて、どれほど助かったものか。でも、だからこそ、彼には彼が望む人生を送ってほしい。彼がそう教えてくれたように。
「…違うよ。そういう解釈はやめて。私はただ…お互いの未来のことを考えて欲しいだけだよ。」
「…未来…。」
その言葉に成が口を閉じる。じっとなにかを考えて、長いため息をつき、彼が立ち上がった。彩響も一緒に立ち上がった。
「…プレゼント、ありがとう。今日の話はちょっと考えてみるよ。」
「本当に?」
「うん、でも今すぐは無理。だから、時間をくれ。」
「時間をくれるのは私じゃなくてオファーしたチームの方だと思うけど…うん、考えてみて。」
ボールを抱いたまま、成は自分の部屋へ戻った。彩響も自分の部屋に戻り、コートも脱がずそのままベッドの上に倒れた。天井を眺めながら、長くてまた短かった一日を振り返った。
(…また、この家で一人になる日がくるのかな…。)
たとえそうでも、きっと大丈夫。きっと昔の生活ほどひどくはならないはずだ。そう自分に言い聞かせながらも、彩響は心の奥底から出てくる「寂しさ」という感情を誤魔化すことはできなかった。
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