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テーブルの下で、変な感覚が足に触った。彩響が驚いて身を引くと、今回は靴を脱いだ足でストッキングの上を撫でてきた。触れられた部分から鳥肌が全身に広がる。
「この際だから素直になってもいいかな、峯野ちゃん?」
「え?」
「俺が君を助けてあげよう。俺がその気になれば、君は今年のスターになれる。しかし、それは君次第だ。」
「…私次第?」
気持ち悪い足がどんどん上に上がり、スカートの中まで入ってきた。これ以上は耐えられず、彩響は完全に体を後ろに引いた。
「黒川さん、これはどういうことですか?意味が分かりません。」
「分からないはずないだろ、いい歳して。」
もう相手は自分の気持を隠すつもりはない様だった。黒川はポケットからカードキーを出し、テーブルの上に載せた。一目でそのカードがこのホテルのものだと分かった。
「…私に、あなたと寝て欲しいと言ってるんですか?」
「そうだね、この本で成功したいんだろ?俺はこの業界の大手なんだ。どの作家が成功して、どの作家が成功しないか…。」
気持ち悪い微笑みが彼の顔に浮かぶ。黒川は彩響の手に自分の手を重ね、ニッコリと笑った。
「…それは全部この手で決まる。」
(うそ、うそ、うそ…!)
目の前が真っ暗になる。ガンガン響く心臓の音がうるさい。今この瞬間、彩響はすぐに消えそうな意識を必死で繋ぎ止めた。
(これが出版業界の仕組みなの…?!)
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