掃除編-7章:言えなかった言葉

21/23

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
石井さんはどうも自分のことが相当気に入ったようで、ずっとはしゃいでいる。そうか、最近の若い人はこんな感じなのか…と思いつつ、やはり同い年であるあの元家政夫さんのことを思い出してしまう。 (そう言えば、あの大掃除のあと、ハーゲンダッツ買ってくれた日…こういう話してた。) ー「ーで、彩響はなにが好きなの?」 ー「え?どうしたの、いきなり。」 ー「言ったじゃん、プライベートな話もしたいって。好きな食べ物はなに?趣味とかある?」 ーもしこの場に成がいたら、そしてこんな合コンみたいな感じになったら…。 (あー駄目だ駄目だ、なんのためにここに来たんだと思うの、私!) 彩響がぱっと顔を上げ、レストランの壁に貼られてあるメニューを確認した。目的は一つ、それは…。 「ここ、お酒とかあります?」 「え?ワインとかあると思いますけど…」 「じゃあ、飲みましょう。ガンガン飲んで仲良くなりましょう、石井さん。」 「え?ああ、良いですけど…」 とりあえず、この心の中のこのもやもや感をなくしたい。彩響は早速ウェイターを呼び、ワインをボトルで頼んだ。グラスに並々になるまで注いで、そのままグラスを高く持ち上げた。 「はーい、では乾杯!」 「あ、乾杯!」 とりあえず、飲もう。いっぱい飲んで、嫌なこと忘れよう。ちょうど相手してくれる人もいるし、どんどん飲むんだ、飲もう…!彩響はストレートでワイングラスをどんどん空けた。 ーそして、お店が閉店になる頃。 (うう…気持ち悪い…。)
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加