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どんな話をしたのか、全く覚えていない。彩響は公園のベンチに座り、深呼吸をしながら自分を落ち着かせた。隣には心配そうな石井さんの声が聞こえた。
「大丈夫ですか?凄い飲みましたね。」
「うう…大丈夫です…。」
「お水飲んでください。楽になりますよ。」
「申し訳ないです…うう…。」
石井さんが自販機から買ってきたペットボトルを渡す。それを一口飲むと、やっと気持ちがスッキリしてきた。長い息を吐く彩響を見て、石井さんが質問してきた。
「あの…なんか嫌なことでもありました?」
「いや…なんか飲みたい気分だったので。」
「まあ、そうですよね。そういうときありますよね。俺は酒より過食する方ですけど。」
「ははは…」
申し訳ないのと、恥ずかしいのとが一気にやってきて目を合わせられない。彩響は気まずく視線をそらし、夜空を見上げた。落ち着いた空気の中、星がキレイに見える。
(なにをやってるんだ、私は…。)
自分が情けなくて、このままどこかに逃げて隠れたい。そう思っているのを察したのか、隣の石井さんが立ち上がった。そして彩響の前に立ち、手を差し伸ばした。
「歩けますか?最寄り駅まで送ります。」
「あ…」
ー「ありがとう、彩響。これからもよろしくな!」
顔を上げ、相手の顔を見る。石井さんが凄い穏やかな顔で、こっちを見て微笑んでいる。あのときも、彼は同じく手を差し伸べてくれた。まるで、デジャビューでも見ているようで、胸が痛くなる。
きっとこの人は理央が言ってたように、いい人だと思う。このままいい感じに付き合ったら、きっと楽しくなると思う。でも…。
(違う。これじゃない。)
顔をじっと見ていた彩響がその手を取らず、そのままベンチから立ち上がった。そして姿勢を整えで、口を開けた。
「…石井さん、今日は誘ってくれてありがとうございました。でも、これ以上は会うことないと思います。」
相手は彩響の発言に最初ちょっと驚いて、しかしすぐ落ち着いて返事をした。
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