掃除編-8章:私の夢、あなたの未来

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誰が書いたのか、一目で分かった。そしてその瞬間、目から涙が止まらなくなってしまった。こぼれ落ちる涙を拭くことも考えられず、彩響はノートを胸に抱いた。 (なりたい自分、なりたい自分…。) 一生かけて、この質問の答えを探し求めてきた。そしてやっと、今この瞬間、その質問の答えを探し出した気がする。嬉しくて、そして切なくて…。いろんな感情が混じったまま、彩響はしばらく泣いた。 いつの間に眠ってしまったのか、気がついたらもう朝日が昇っていた。ベッドの上で目を開けた彩響は、ノートを抱いたまま浴室に向かった。洗面台の前に立つと、凄い顔の自分が見えた。それでも、不思議とその顔が嫌だと思えなかった。いつかのように、彩響は鏡の中の自分をに向かって声をかけた。 「私は、美しい。」 改めていうと、不思議と本当にそう思えてきた。彩響は再び声を出した。 「私は、美しい。」 「私は、美しい。」 そして最後、わざと大きい声で叫んだ。 「私は、なりたい自分に、なれる!」
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