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向かったのは家の最寄り駅からもう少し行くと着く駅。電車から降り、スーパーで軽い買い物をして、彩響はどこかへ歩き出した。約15分くらい歩くと、目の前に少し古いアパートが見えた。階段を登りある部屋のチャイムを押すと、中から聞き慣れた声が聞こえた。
「どちら様ですか?」
「理央、私だよ。」
「彩響?」
声を確認した理央が早速玄関のドアを開ける。予想しなかった訪問に驚いたのか、理央が目を丸くしてこっちを見た。
「どうしたの、会社は?」
「休み使った。」
「そう、まあとりあえず入って。」
「どこに行こうとしてたの?」
理央はどこかに出かけようとしていたのか、コートを羽織っていた。彩響の質問に理央は答えず、長い溜息をつく。中へ入り、リビングのテーブルの上に置いてあった書類が目に入った。それを見て彩響は理央がどこに行こうとしているのか、すぐ分かった。
「…昨日、郵便で送られたよ。」
理央が説明する。離婚届を郵便で送るとは、向こうはもう本気らしい。彩響は敢えてそこには触れず、周りに視線を移した。
真昼のはずなのに、とにかくここは暗い。彩響はじっくりと家中を見回した。あっちこっち溜まっているゴミや、いつ拭いたのかもしれないほど汚れたテーブルなど、どこを見てもここは汚い。そう、この空間はここに住んでいる理央の気持ちを反映していた。彩響はパッと振り向き、自分が持ってきた袋を理央に渡した。うっかりそれを受け取った理央が中身を確認して聞いた。
「えーと、これは…雑巾?掃除用のブラシ?」
「そう、買ってきたの。今から掃除するよ、理央。」
「掃除?ここを?」
「そう。今から二人で掃除しよう。私も手伝うから。」
理央が袋と彩響の顔を交代に見る。まだ状況が把握できてない様子だ。彩響がまず自分から雑巾を一つ取り出した。
「この家は、今あなたの心を映しているよう。だからここを綺麗に磨くの。」
「はい?なに言ってるの、今はそんなことよりあいつを探しに行かないと…!」
「どこに行くの?あの浮気相手のところへ駆けつけてバーサスで戦うつもり?」
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