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奪うように佐藤くんからレジ袋を取り、エレベータへ飛び込んだ。エレベータの数字が9から1に変わるその短い間、急いでパンを袋から出し、ギュッと絞って口の中に突っ込む。味が何なのか、そんなもの把握する余裕などない。口の中をパンでいっぱいにしてもぐもぐすると、エレベータがチン!と音を出す。会社の正門まで走り、口の中のものを牛乳で胃袋に流した。
「主任!機材持ってきました!」
「一緒に乗って!」
タクシーが到着するのと同時に佐藤くんが現れた。二人で後部座席に乗り込むと、間もなくタクシーが出発する。佐藤くんが心配そうに声をかけた。
「到着するまで30分はかかるらしいし、ちょっと寝たらどうっすか?」
「ありがとう、でも一回寝ちゃったら起きられないよ。だから大丈夫。」
「いや、でも…」
寝る代わりに、彩響は持っていたファイルを確認した。今日の撮影は海辺で、モデルも外国のそれなりに有名な人を呼んでいるから、どうしても気を抜くことはできない。彩響は車の窓の向こうを見ながら考えた。
(早く着け、早く着け…早く全部終わらせて寝たい…)
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