掃除編-8章:私の夢、あなたの未来

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中島くんの興奮した声が聞こえる。そして同時に何かを急いでタイピングする音も聞こえた。おそらくこのネタを早速記事にしているのだろう。 「その一部始終を録音したデータがあるの。あなたに送るわ。」 ー「あの編集長に関する噂は、結構昔からあったんだよ。大体ターゲットは世間知らずの新人女性作家なんだろうな。…にしても、よく録音できたな。どうやったんだ?」 「癖よ、癖。この仕事では、人にインタビューする時録音するのが基本だから。」 ー「なるほど,よくやった。…そして峯野、元気出せよ。俺も俺のやり方でその変態野郎を裁いてやるから。」 優しい言葉に心が暖かくなる。以前なら、こんなことを言われたらすぐ泣いてしまったんだろうけど、今は違う。彩響は笑いながら返事した。 「ありがとう、でも大丈夫。もうこんなことで一々傷ついたりしない。」 そう、もう大丈夫。誰も自分を傷つけることはできない。自分が既に素敵な人だと分かっているから、特別な人だと分かっているから。 「録音データはメールで送るよ。メールアドレス教えてくれる?」 電話を切ったあと、彩響は早速データを送った。これですぐあの変態編集長を拘束できるとか、そんなことは期待していない。しかし、自分のように、夢を抵当に取られ、苦しむ人が少しでも減ることを祈る。 大きい仕事を一つ終え、長いため息をつく。しかしここで終わりではない。まだ彩響は、やらなくてはいけない大きいな仕事があった。彩響は再びスマホを手に取った。 「おはようございます、Mr. Pink。」 ー「ハニー、朝から君の素敵な声が聞けてとても嬉しいよ。なにか御用かね?」 「実は、直接お話したいことがあってお電話いたしました。」 ー「今から?ハニーならいつでも歓迎するよ。」 「ありがとうございます!では、今からそちらへ向かいます。」
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