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「ハニー、ごきげんよう。いつもの君も素敵だけど、今日の君はさらに美しい。なにかいいことでもあったのかな?」
Cinderella社の応接室に入ると、 Mr. Pinkがいつもの笑顔で歓迎してくれた。大げさすぎるMr. Pinkの挨拶に、彩響は笑顔で返した。
「そうですね、いいことって言いますか…大きい決心をしました。」
「ほお、その「大きい決心」がなんなのか気になるね。…さて、本日の用件を聞かせてくれるかな?」
彩響はソファーに座り、軽く深呼吸をした。決心をしたとはいえ、この話題を切り出すには多少の勇気が必要だった。やがて彩響が顔を上げ、口を開けた。
「Cinderella社の規則上、家政夫たちの個人情報を顧客に知らせるのは禁止されていると分かってはいますが…成の連絡先を教えてくれませんが?」
「それは、厳しいね。」
Mr. Pinkが向かいのソファーに座る。一言で断られ、彩響は焦りを感じた。
「お願いします、Mr. Pink。私,彼に話さなきゃいけないことがあるんです。」
「ハニーの気持ちは理解できなくもない。しかし、これは理由があってのルールなんだ。顧客は皆ハニーみたいに心優しい人ばかりではない。家政夫個人の連絡先を教えると、辞めた後も連絡してトラブルを起こす人が意外と多くてね。」
「私が彼を困らせるため連絡したがってると思いますか?」
「まさか。だが社長である私自ら例外を作ることはできない。…代わりに提案しよう。私に、彼に言いたいことを言ってくれ。それをそのまま彼に伝える。」
「私の気持ちを、そのまま伝えられますか?」
「さあ、どうだろ。でもきっとうまくいくよ、ハニー。きっと彼は君に返事をするよ。」
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