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海辺の撮影はなんとか終わった。ただ、モデルが約束した時間より1時間以上遅れて来たため、自然と撮影の時間も延びた。撮影が終わってすぐ、彩響は再び機材を片付けてタクシーを拾った。オフィスへ戻る途中でもスマホを離すことはできない。隣で佐藤くんがおずおずと声をかける。
「主任、今日4時30からミーティング…」
「知ってる!もう、なんでみんなこうも時間の感覚がないの?1時間も遅れるなんて、ありえない!モデルとしての基本概念もないやつじゃん!」
「えーと、なんかすんません…」
「ごめん、佐藤くんにキレてるわけじゃないの。ただ私がイライラしているだけだから。」
「いやいや、俺気にしないんで!それより、着いたら俺すぐパワポのデータ取ってくるんで、準備しててください!」
お人好しの佐藤くんは笑って流してくれた。ああ、いいやつ。君ももうすこし余裕のある職場で社会生活スタートできたら良かったのに…。そんなことを思っても口には出せず、彩響はそのままタクシーから降りた。オフィスへ戻り、化粧を秒速で直して、脱ぎっぱなしていたジャケットを羽織る。急いだおかげでこれから30分くらい資料を再確認できそうだ。今日のミーティングには株主も参加するので、絶対ミスってはいけない。深呼吸をしていると、佐藤くんが走ってきた。
「主任!峯野主任!USBが見当たりません!」
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