掃除編-8章:私の夢、あなたの未来

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顔に当たる息が熱い。このままなにもかも、このキラキラ光る瞳の奥まで吸い込まれてしまいそうだ。そして、彩響はやっと笑った。今までの不安や、心配が一気に飛んでいくのを感じる。 ーあ、そうか。これが、「幸せ」という感情なんだ。 いつも「現実」という言葉に追われ、一生分かることもないと思っていたこの感情。やっと辿り着いたこの瞬間が嬉しくて、つい涙が出そうになる。涙を堪える彩響を見て、成が指先で目元を拭いてくれた。そして、ついに唇が重なろうとした瞬間ー 「…邪魔して大変悪いのだが、私がいるのを完全に忘れているようだね。」 「うわーっ!」 MR.Pinkの声に、二人が慌てて離れる。そうだ、いつの間にか忘れていたけど、ここにいるのは二人だけではなかった。彩響が顔を真赤に染め、Mr.Pinkに向かって叫んだ。 「ミ、Mr.Pink!! どこから見てたんですか?!」 「うん?それはもちろん、最初から見てたよ。」 「い、い、い…いたなら先に言ってください!」 「いや、そもそも私の存在を忘れてしまったのはハニーの方で…私、特に悪いことはしてない気がするが?」
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