掃除編-8章:私の夢、あなたの未来

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Mr.Pinkの言う通り、彼の存在を完全に忘れたのは彩響の方で、Mr.Pinkが勝手に入ってきたわけではない。居ても立ってもいられず、右往左往する彩響を成が止める。彼は彩響の手をぎゅっと握り、こう言った。 「Mr.Pink、あんたには礼を言うぜ。俺を雇ってくれてありがとう。家政夫になれたから、こいつに会えた。感謝するよ。」 「いや、私は特に何もしてないよ。河原塚くん、私は切っ掛けを与えただけだよ。君の未来は君が作ったのだ。」 そう言って、Mr.Pinkが優しく笑う。穏やかなその笑顔に、見ているこっちまで笑ってしまう。Mr.Pinkが話を続けた。 「私こそ感謝を言おう、河原塚くん。私はこの会社を立ち上げ、若者たちがそれぞれの道を探し出すことに少しでも役に立ちたいと思った。そして今日、私はいい仕事をしていると確信したよ…。ありがとう、顧客を奪われるのは悲しいことだが、君なら安心できる。ハニーを幸せにしてくれ。」 そう言って、Mr.Pinkが手を出す。成も自分の手を出し、二人は握手をした。とても微笑ましい風景だったが、いきなり成がぼそっといった。 「ーで、もう彩響にハニーと呼ぶのはやめてもらえないか?今日から俺のハニーなので。」 「ほお?気に障ったのかな?」 「他のやつがこいつに手出すのは絶対許さない。そしてなんだか、こう…なんていうか…」 「?」 「あんたはなんだか、なんか油断できない気がするんだよな…。」
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