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「本当に良かったです!主任、いい人なので、本当ラッキーだと思ってください!主任、俺また連絡します。ーじゃ!」
その言葉だけを残して、佐藤くんは自分が来た方向へまた走って行ってしまった。まるで嵐が通ったよな感覚で、ぽかんとしていた成がぷっと笑い出した。あれだけイライラしていたのに、一気に気分が変わる成を見て彩響が一言言う。
「なによ、あれだけイライラしていたのに。」
「いや、確かに最初はムカッとしたけど、彩響がいい人って分かってる時点で、きっとあいつも良いやつなんだろうな。」
「なにそれ、それがいい人かそうじゃないかを選ぶ基準?」
「だって、彩響は間違いなくいい人だから。あ、でも連絡は程々にしておけよ。」
「なに、嫉妬してる?相手は7歳も年下の元部下だよ?」
「関係ねえよ。何歳だろうが、こんなに美人で素敵な女性と付き合いたいのは男の基本欲求だろう。」
さり気なく言うその褒め言葉に、顔が赤くなる。恥ずかしさで視線を逸らすと、成が笑いながら彩響が持っていたダンボールを手に取った。
「…で、ちゃんとお片付けできた?」
「うん、きちんと終わらせたよ。嫌な思いも沢山したけど、いざ辞めるとなるとすごい複雑な気分になるね。」
「まあ、そういうもんだろ。とにかく、長い間お疲れ様、彩響。これが彩響の新しい人生の一歩になるよ。」
「うん、ありがとう。あなたこそ、チームとの話はきちんと片付いた?」
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