掃除編-8章:私の夢、あなたの未来

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二人はロビーを出て、駅の方へ歩いた。彩響の質問に成が頷く。 「そう、最初すごい止められたけど、結局本人の意思だから。」 成は結局、所属していたチームを辞めることになった。彩響は止めたけど、成はそのまま辞表をだしてしまった。理由は、「彩響の傍を離れたくないから」だった。気持ちは嬉しいけど、ちょっと申し訳ない気分になるのは仕方ない。 ー「本当に後悔しないの?」 ー「大丈夫、あっちこっち巡らなきゃいけない仕事はもうやめる。」 ー「でも…。」 ー「彩響、分かってくれ。俺は自分の『本当の夢』を追うと決めたんだ。だから、なにより、彩響の隣にいられる道を最優先で選ぶ。行っただろ、彩響は俺の「夢」だって。」 それから時間が流れ、お互い自分の仕事を片付けることができた。今日からは本当に、彩響も成も、自由の身になれたのだ。 (いや、自由というか、無職になったんだよね…。) 「無職」という言葉を思い出すとすこし不安にもなるが、取り敢えず今この瞬間はとても幸せに感じた。成が言ったように、今日から新しい人生の一歩を踏み出そうとしているから。ーこの隣にいる、とても素敵な笑顔の人と。
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