掃除編-8章:私の夢、あなたの未来

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成が指差す先に、窓が見える。気持ちいい太陽の光が優しく差し込むその風景を見て、彩響は以前のことを思い出した。過労で倒れて、このベッドで目を覚ました時。あの時も、この窓から入ってくる光はとても綺麗だった。今の光が、あの日の風景と頭の中で重なる。 (あの日から、少しずつ変わってきたんだ。私の人生も、眠っていた夢も、そして…この人を思う気持ちも。) 「うん、いいよ。一緒に拭こう。」 二人は窓の前に並び、丁寧に窓を拭いた。全身で温かい日差しを受け入れ、窓が透明になるまで拭くと、更に気持ちが高まるのを感じる。彩響はチラッと隣に立っている成の顔を見る。とても明るくて、頼もしい、優しい横顔。その顔に、又心臓の鼓動が早くなる。 数え切れないほどの痛み、そして我慢してきた涙。それが全部、彼と一緒に掃除をして、未来につながった。最初はバカバカしいとしか思ってなかったけど、今ならはっきり言える。「人生を変えたいなら、まず、「掃除」をしなさい」と。 もちろん、今からずっとバラ色の人生だけが待っているわけではないだろう。またどんな想像もしない試練が待っているか分からない。でも、きっと大丈夫。うまくやっていけると信じられる。なぜなら…。 「うわ、見ろよ彩響!すげー綺麗になったよ!鳥がぶつかったらどうしよう?」 ーなぜなら、このヤンキー家政夫さんが隣にいるから。
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