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河原塚さんの手に引っ張られ、彩響はソファーのところまで来てしまった。無理やり肩を押さえて、彩響を座らせると、河原塚さんも床に片膝を立てて座る。その時まで彩響の手をずっと握ったままだった。
「そんな慌てて会議に入ったら、絶対大きいミスに繋がる。とりあえず、目を閉じてみろ。」
「え?」
「ほら、すぐ終わるから。あんだけ準備しておいて、大事なときにミスったりしたら悔しいだろう?そんな時間取らないから。」
(…本人の経験?)
結局言われたまま、彩響は目を閉じた。引き続き河原塚さんの声が聞こえる。
「じゃあ息を吸って。大きく。」
「…。」
「また大きく吐いて。そう、もう一回。」
言われるまま深呼吸を3回繰り返す。不思議と少し落ち着いた気分になり、彩響は目を開けた。前には河原塚さんの顔が見える。
「どう?」
「…落ち着いたようです。」
「うん、それで結構。」
「あの、ありがとうございます…。」
なんだか恥ずかしい気分になり、彩響はその場からパッと立ち上がった。さっさと部屋を出ようと扉へ向かうと、なにかに気づいた河原塚さんが彩響を呼び止めた。
「彩響!あんた、靴はどうした?」
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