掃除編-2章:バイクの王子様

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ハプニングの多い一日が終わった。ミーティングも順調に進み、株主は発表に満足したように見えた。多少は心配だったが、誰も彩響のスリッパを気にしていないようだった。普段あれこれうるさいセクハラ編集長にも、珍しく「おつかれ、うまくやった」と褒められ、彩響はやっと安心することができた。スッキリした気分で彩響は電車から降りた。 (なんか買っていきたいけど…こんな時間はコンビニくらいだもんね…) 認めたくはないが、あの生意気な家政夫さんに助けられたのは事実なので、なにかおごりたいと思った。でもどの店も閉まっていて、選択の余地がない。結局彩響はコンビニでアイスを大量に買い、外へ出た。丁度夜風も気持ちよく、なんだかテンションが上がる。ずっと仕事に追われていて、こんな軽い気持ちで退勤するのは結構久しぶりな気がする。とりあえず今日は無事終わったし、明日くらいは少しゆっくり出勤しても…。 「ただいまー」 マンションの玄関を開け、中へ入る。帰ってきた時、こんな風に電気が付いているのがまだ慣れなくて、不思議な気分になる。中から彼の声が聞こえた。 「お、お帰り!今日も遅かっ…」 (あれ…) 一瞬耳が遠くなるような感じがして、周りが暗くなる。 そしてすぐ、彩響の意識はFade Outした。
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