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婚約者が玄関を開いた瞬間、彩響の目が丸くなる。なにもかもがピカピカで、空間も広い。彩響はそのまま中へ飛び込み、部屋の扉を全部開けながら走り回った。そんな彩響の姿を、婚約者は微笑ましく見守る。
「そんなに気に入った?」
「当たり前でしょう!こんないいマンションに住めるなんて!」
「気に入って貰えて良かったよ。ローンはこれから頑張って返さなきゃいけないけど。」
ローンは確かにあるけど、今はそんなことどうでも良かった。ずっと狭い部屋で息苦しい生活をしてきたのに、これからは好きな人と、こんな素敵な空間に住めるなんて。幸せすぎて夢みたい。
「私、頑張って稼ぐから!本当頑張るよ!」
「まあ、落ち着けよ。これからここで二人、幸せにくらそうぜ。」
「ありがとう、武宏!本当大好きよ。」
「俺も、大好きだぜ、彩響。」
婚約者が優しく笑う。ああ、今までいろいろ大変だったけど、これから自分の人生もバラ色に染まるに違いない。苦労した分、私にも幸せになる権利がある。間違いない、これは誠実に生きてきた自分に与えられた、神様のご褒美なのだー。
(…なんてね。そんな幸せ、簡単に訪れるものでもなかったのに。)
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