掃除編-3章:大掃除、スタート!

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別れた当時はあいつのことを考えるだけでイライラして堪らなかったのに、3年も経つと、それも空しいことだと思い始めている。どうせ人生ってそんな簡単に思い通りに進むものではない。もう自分に残っているのは、まだまだローンが残っているこのマンションと、30年も一緒に生活してきたこの体のみで、その他には、なにもー。 「ーまあ、男女の関係いろいろあるから、俺がなにか言う立場ではないけどさ。」 クラブケースを持っていた成がふと言い出す。すると彼が玄関を開け、ケースを外へ出すと、又中へ戻ってきた。 「でも、このマンションに初めて来たときは、きっとわくわくしていただろ?これからここでいいこと沢山あるんだろうなーとか。そんな良いことばかり考えていたんだろ?」 「それは、まあ…。」 「クソ野郎のことはさっさと忘れて、そのときのわくわくした気持ちだけ取り戻そうぜ。きっとまたいいことがこの家に訪れるから。」 そう言って、成が持っていた雑巾を渡す。さっきクラブケースを自分の目が届かない場所へ持って行ってくれたのも、こんな言い方をしてくれるのも、きっと彼なりの優しさなんだと思う。その部分はありがたいのだが…。一つ引っかかることがあり、彩響が質問した。 「…で、なんであいつが『クソ野郎』だと思ったの?さっきまでは『男女の関係いろいろある』とか言ってたのに?」 「ううん?あ、さあ…どう見ても、あんたがクソ女には見えないからな。俺、それなりに人間見る目はあると思うし。」 「はい?」 「あ、俺マスク取ってくるよ。ほこり結構溜まってるから。」 成がそういってリビングに向かう。予想外の発言に、彩響はただぽかんとその後ろ姿を見守るだけだった。 (私…褒められたの??) バイクに乗るときも、こんな風にウィンカーも出さずに、ぐっと入ってきたりするんだろうか。まったく油断のできないヤンキー家政夫さんだった。
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