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渋々言われた通り鏡を見るけど、どうしても後に密着している背の高い男性が気になり、キョロキョロ見てしまう。鏡に写った成がにっこりして話を続けた。
「じゃあ、これから鏡を見て、こう言うんだ。『私は美しい』。」
「…はい?なんの羞恥プレイ?」
なにを言い出すのかと言えば…彩響が呆れた顔で鏡を見る。さっきから、いや元々からおかしい行動ばかりだが…。ここまでバカバカしいことを言われるといい加減呆れてくる。しかし成はとても真剣な顔で、逆に質問してきた。
「なにがおかしい?だってあんた、「私は美しい」っていつも言ってるだろ?」
「誰がいつ、そんなことを言ったの?」
「もちろん声を出して言ってはないけど、定期的に美容室も行くし、エステにも通っているだろ?そういう行為が全部「私は美しい」「もっと美しくなりたい」と言ってるのと同じじゃない?」
「それは、社会生活するには、ある程度の身だしなみを整えるのは必要不可欠なので…。」
「いくら高いお金払って美容室とか通っても、根本的に自分自身が本気で「私は美しい」と思わないと、そうはならない。これを言ったところで、今すぐ何が起こるわけじゃないかもしれないけど、徐々に綺麗になれる。本当に自分自身がそうだと思うようになる。とても効果的で、いい魔法だよ。」
風水の次は魔法?バカバカしいけど、実際「美しくなりたい」と思って美容室もエステも通っているのは事実だ。人間なら誰でも可愛くなりたいとか、ハンサムな顔になりたいとか思って当然だし、身だしなみに投資するのを勿体無いと思ったことはないが…。難しい顔をする彩響の後で再び成が口を開ける。
「そして、この魔法にはもう一つの長所がある。」
「…?」
「これはお金が一切かからない!言うだけタダ!そして綺麗になる、最高じゃない?」
「はあ…。」
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