掃除編-3章:大掃除、スタート!

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呆れすぎて、逆に笑いが出る。そうだ、アホくさいけど、言われた通り、言うだけタダ…ではある。それに、このままだと、いつまでも自分を開放してくれなさそうで、彩響はもじもじしながら口を開けた。 「私は…美しい。」 「もう一回。」 「私は、美しい。」 「もう一回。」 「私は美しい。私は美しい。私は美しい。」 ここまで言うと、不思議とさっきまでの恥ずかしさが少しは和らげた気がする。成が微笑んでいるのが見えた。 「どう?」 「さあ…どうでしょ。」 「大丈夫、きっとそのうち効果がでてくるよ。」 見てるこっちまで気持ちよくなる彼の笑顔を見て、彩響はふと思った。実は彼が一所懸命言っているこの変なレクチャーより、自分の体に触れているこの妙な姿勢が気になる。いろいろ変なことを沢山言われ、今まで意識していなかったけど、いざ気にすると恥ずかしくなる。しかしそれと同時に、なんだか安心もしてきた。 (こんなふうに誰かに後から支えてもらったの…何年ぶりだろう。) ずっと一人で、なにもかも解決して、我慢して…。そんな生活の繰り返しで、今までずっと忘れていた。誰かがこうやって支えてくれる安心感を。自分より大きい体の中でリラックスしていると、自然に彼が言うアホくさい言葉もそれなりにいい感じに聞こえた。 「…本当に、美しくなれるのかな。」 「もちろん。美しくなれるだけじゃなくて、いろいろとうまくいく。」 「どうして、そんなに確信できるの?」 「それは…俺が経験者だから??」 すこし驚いて鏡を見るけど、成は特に変わらない様子で、ニコニコとこっちを見る。彩響はそれ以上質問せず、もっと力強く鏡を拭いた。 鏡を全部拭いて、キラキラと光る全面を眺める。さっきの言葉のおかげなのか、それともただ機嫌がよくなっただけなのか、鏡の中の自分がなんとなく綺麗に見えた。おそらく、なにかの錯覚だろうが、それでも徐々に気分が晴れてきた。 鏡を眺めていると、一瞬だけ後ろの彼と目があう。 その短い一瞬で、自分を支えている手に少し力が入った気がした。 しばらく休んで、次は自分の部屋を片付けることにした。便器までクリアすると、もうなんでもできそうな気がする。散らかっていたものを片付けて、その勢いでベッドの下を探ると、小さい箱が出てきた。もう何年も手を出してなさそうなその箱を開けると、中にはー。 「私…まだこれ持っていたの…?」
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