掃除編-3章:大掃除、スタート!

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ーその日も、母の叫び声は聞こえた。離婚してしばらく経つのに、母の怒りはずっと現在進行中だった。今日も母は電話越しで父とお互いに暴言を吐いていた。 「そんなに嫌なら、私を殺しにくれば?一緒に彩響も殺せば?!そんなに殺したい女が産んだ子供なんか、必要ないでしょ!!」 なにも聞こえない、なにも聞こえない。そう自分に言いかけて彩響はノートに自分の話を書いた。自分が描く世界では、主人公の親はとても仲良しで、みんな優しい。いつだって丁寧に喋ってくれる。簡単に「お前なんか死ねばいいのに」とか言ったりしない。そう、誰も主人公を存在だけで責めたりしない。ありのままで、主人公をかわいがってくれる。自分が望む世界に夢中になり、しばらく書いていると、ふと誰かが部屋の中にいるのに気づいた。 「あんた、なにやってるの?」 慌ててノートを後ろに隠す。しかし母はもう気づいていた。母はまたヒステリックな声で叫びだした。 「また小説とか書いてるの?!そんなバカバカしい真似はやめなさいって何度も言ったでしょ!」 「お母さん、違います、これは…。」 「いつになったら正気になるの?あんたのクソ親父はね、あんたと私をどっかの生ゴミのように扱って結局捨てたのよ?一体いつになったら現実を受け入れるの?学校通ってお小遣いもらってるから、気楽でたまらないの?私がどっかでお金を大量に拾ってきてるとでも思ってるの?稼ぐのは死ぬほど辛いのよ、お母さんの苦労を少しでも理解しているならこんな馬鹿な真似しないよ、絶対に!これは私を無視している明らかな証拠よ!まさにその父にその娘ね!」 決してそんなこと思っていない。母が苦労して稼いでくれたお金で学校通えるのも、多くはないけどお小遣いを貰えるのも、離婚した時どこかの施設に送らず連れてきてくれたことも、全部感謝している。なのに母はなにかを言う度に、「父と同じく私を無視する」、「夫に捨てられると子供にも捨てられる」と叫んだ。否定しても話を聞いてくれない。彩響が泣いて謝罪するまで母の怒りは爆発した。いや、たまには泣いても謝罪しても怒りは止まらなかった。
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