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長い時間、自分の夢はこのノートと同じくずっと眠っていた。その事実を認識すると、まだ胸が痛くなる。
当時はそれでもまだ希望を失わない、純粋な子だった。現実は辛いけど、それでもきっと未来には良いことがあると信じていた。希望をのせ一文字ずつ、思いを込めー。
ーでも、もうその少女はどこにもいない。ここにいるのは、家のローンと仕事に追われ、ただただ会社と家を往復するだけの、中途半端な30歳女性だけ。しかも、一回破婚もしている…。
「なに見てるの?」
顔を上げると、そこに成が立っていた。彼がノートを指しながらもう一回聞いた。
「それ、なに?」
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