掃除編-3章:大掃除、スタート!

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気持ちいい夜風が頬に当たる。コンビニで買ったアイスを食べながら、二人は線路沿いを歩いた。いつも通勤で使っている道だけど、なんだか今日は特別に感じる。ヤンキー家政夫さんは彩響の隣でさっさと2つ目のアイスを開封した。ジロジロ見ていると、彼が聞いてきた。 「なんだ、だから2つにしとけって言ったのに。」 「いや、アイスは一つで結構です。ハーゲンダッツ、ありがとう。」 「どういたしまして。」 成はそう言って、持っていたアイスバーを瞬殺した。すごい食べっぷりだな?と彩響が感心すると、成が明るい声で質問した。 「ーで、彩響はなにが好きなの?」 「え?どうしたの、いきなり。」 「言ったじゃん、プライベートな話もしたいって。好きな食べ物はなに?趣味とかある?」 これは、合コンに出てきそうな質問だな…。彩響はアイスの残りを全部口の中に入れ、答えた。 「好きな食べ物は…ビーフシチューかな…。」 「デミグラスソースのやつ?」 「そう。」 「他は?趣味とかはある?」 「本読むことかな…。最近あまり読んでないけど。」 「まあ、あれだけ仕事していると時間ないもんな。兄弟はいる?」 「いないよ、私だけ。…あなたは?兄弟いるの?」 多少わがままな部分もあるけど、こいつはとてもいい性格をしていると思う。だからふと気になった。こんな穏やかな性格を持った人は、どんな家庭で育ったのか。 「俺?俺、妹がいる。7歳年下で、今大学生。」 「へえ…結構年離れているね。」 「小学校の時、あいつのおむつ替えてあげたこと覚えてる。小さかったのに、いつの間にか大きくなってさ。最近彼氏できたっぽい。」 「そう…ご両親は?」 「親父はサラリーマン。お袋は専業主婦。たまにレジのバイトとかしてる。ふたりともまあ普通の人たちだよ。」 (その「普通」というのが最も珍しいんだよ。) 夫婦の仲は円満で、特に目立つ事件もなく、特に子どもたちが大きい問題を起こすこともない、とても普通の家庭。そんな家庭で育ったからこそ、こんな明るく、こんな丸い性格になれたんだろうか。 「家政夫になると言った時、両親の反応はどうだった?」 「うちの親?いや、うちはいつだって放任主義だから、特になにも言ってないよ。『あんたの人生だし好きにしなさい』と言っただけ。いつだってそんな感じ。」 「いいご両親だね。」 「そうか?普通だと思うけど。」
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