掃除編-4章:ヤンキーにも過去はある

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イライラしてメールを打っていると、部屋の中に白谷くんが入ってきた。もう自分が事故ったことに気付いているらしく、罪人の顔で恐る恐る彩響のデスクの前に立った。 「主任、申し訳ないです…。」 「白谷くん、これ一体どういうことなの?こんな大きいミスにも気づかないで何をしてたの?!校正する時寝てたの?」 「すみません、それが…。」 「あなたがこんなミスをすると、結局責任取るのは私…!」 ここまで言った瞬間、ふと頭の中に例の便器掃除のことが浮かんだ。便器を抱いて、丁寧に中まで手を入れ…。そうだ、自分は人のうんちが付いた便器も素手で洗った人だ。こいつのうんち拭い、いや尻拭いくらいはここまでイライラせずできるはずだ。 「大声出してごめんなさい。何かあったの?白谷くん普段こんなミスしないでしょう。」 「え?あ、その…実はその日嫁が入院してて…。お腹の子供に異常があったらしく…。」 「入院?!大丈夫なの?」 「はい、もう退院しました。」 「そんなことがあったのなら、先に言ってくれれば良かったのに。」 「そんな、仕事ですので…でも、結局迷惑かけてしまい本当に申し訳ございません。」 事情を聞くと、徐々に心が落ち着くのを感じた。彩響は軽く深呼吸して、そのまま持っていた小冊子を返した。 「ホームページにこれに関する謝罪載せるから、内容昼休憩までに考えておいて。来月号にも載せるから。」 「え?あ、はい…。本当に申し訳ございません。」 「私に謝らなくていいよ。次から気をつけて。」 白谷くんは目を丸くして彩響をしばらく見て、すぐ部屋を出ていった。彩響は再びあの問題のメールも読み直した。さっきはブチ切れてすぐ電話で叫びたい気持ちだったが、今は違う。さっきイライラMAXで書いてあった内容を全部削除し、丁寧に誤解を解く内容を打ち、それを送ると、すぐ内線の電話がなった。田中さんからだった。 「峯野、ごめんな。さっきは俺が見間違えてたよ。」 「いいえ、大丈夫です。」 「それにしても丁寧に返事してくれてありがとう。俺だったらブチ切れて今すぐ俺のところまで走って来てるよ。」 そうだ、以前なら確実にそうしていた。しかし今は違う。彩響はデスクの上においてあったコーヒをとり、ゆっくり返事した。 「いいえ、お気になさらずに。人間誰しも細かいミスはしますから。」
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