掃除編-4章:ヤンキーにも過去はある

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(まさか、自分がそんなことを言うとは…。) 揺れる電車の中、彩響はぼんやりと会社での出来事を考えた。まさか、死ぬほどノーミスに命かけていた自分がそんなことを言うとは。 (…これが便器掃除の効果?) いや、便器ちょっと拭いたくらいでなにか起きる訳がない。彩響は頭を振って、ぼんやりと外の風景を見つめた。もうすでに暗くなった外は、各場所から作り出す光でキラキラ光っていた。その光を目で追っていると、ある瞬間なにかが頭の中で閃いた。 ーそうだ、今日の出来事を物語にしたらどうだろ? 慌てて手帳とペンを出す。普段は絶対ミスを許さない主人公が、なにかをきっかけに少し周りのことや相手の事情を考えるようになる。そのきっかけとなるのは…便器掃除?いや、便器掃除はちょっと汚く感じるから…。あれだ、親友の話だ。主人公が親友の前ですごいミスをするけど、その親友が「人間誰しもミスはするでしょう」と言って…。サクサクと手帳のメモ帳に内容を書いていた手がふと止まった。 (…違う、これはここに書くべきじゃない。) ーこれは、「Treasure Note」に書く内容だ。 丁度車内に彩響の最寄り駅に着いたと案内放送が流れてきた。彩響は荷物を片付け、急いで電車から降りた。
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